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住宅の日当たり・明るさ診断において なぜ照度計算が重要なのか?

  • 執筆者の写真: 建物ラボ
    建物ラボ
  • 2024年8月28日
  • 読了時間: 6分

◆住宅の日当たりと照度計算の重要性◆


1. はじめに

住宅の設計において、日当たりと照度は非常に重要な要素です。

日当たりと照度は何が違うの?同じじゃないのと思いますよね。

簡単に解説すると、日当たりは直射日光の入り方の確認。照度計算は実際に空間がどの位の明るさになるかの(ルクス表示)確認です。こちらの違いを最初に認識して下さい。

日当たりシミュレーションで直射日光の入り方確認

直射日光の日当たりシミュレーションは、窓の配置や家全体の配置を決定するための重要なツールですが、これだけでは住宅内部の本当の明るさは十分に把握できません。


南面に2階建て住宅、自宅が平屋建て住宅の場合

例えば上の添付画像のような建物・土地条件の環境の場合良くあると思います。南面に2階建て建物、ご自宅が平屋建て住宅の様な環境・配置条件の場合です。この様な環境の場合、直射日光はあまり期待出来ません。直射日光が期待出来ないからと言って、南面の窓を小さく取ってしまい、外に対して閉じてしまうと更に逆効果となります。直射日光が入らないということは、日当たりシミュレーションの動画を確認しても何も確認することは出来ません。(直射日光が入らない事を確認するというシミュレーション)になってしまい無駄です。


 

直射日光が入らなくとも明るさを確保するために確認する項目が照度計算です。


タワーマンション北側の部屋の明るさ
4面全て住戸の高級タワーマンション

都内の高級タワーマンションでは、東西南北が住戸になっており中心部にエレベーターなどが配置されているセンターコア型が主流です。その場合、北側に面した住居もございます。

北側に面した住居は直射日光は入りません。ということは常に暗いということでしょうか?


いいえ。そうではありません。そうだとしたら北側の部屋は売れない事になってしまいます。実際には直射日光の入らない北側の部屋でも十分に明るいです。それは太陽光による明るさは空気中で拡散した光からも明るさを得る事が可能だからです。この拡散光による明るさ確認は照度計算しないと分からない項目なのです。※だから、南面の2階建て・自宅が平屋の場合は照度計算が必須なのです。


照度計算も組み併せて行うことで、初めて住宅の内部環境が適切かどうかを判断できます。本稿では、なぜ直射日光の日当たりシミュレーションだけでは不十分なのか、照度計算の重要性について解説します。



 

2. 日当たりシミュレーションの役割(直射日光の入り方確認)


日当たりシミュレーションは、住宅にどの程度の時間、どの方向から直射日光が当たるかを視覚的に確認するための手法です。これは特に以下のような場合に有効です。

●季節ごとの太陽の位置変化を考慮し、年間を通しての光の入り具合を確認する。

●隣接する建物や木々の影響を受けて、どの程度の日差しが室内に入るかをシミュレートする。

●室内の温度調節やエネルギー効率の最適化を図るために、直射日光がどの部屋にどのくらいの時間当たるかを把握する。

●夏の直射日光を確認して、日射遮蔽可能な軒の出や庇の有無を検討できる。

●冬の直射日光を取り入れる、かつ夏の直射日光を遮蔽する最適な庇・軒の出を確認できる。

●何時にどの位直射日光が差し込むのか?事前に把握できる。AMが明るいのか?朝の時間帯が明るいのか?夕方が明るいのか?西日が強いから日射遮蔽が必要なのか?

これにより、夏季には直射日光を避け、冬季には日光を取り入れるといった設計が可能になります。


 

3. 照度計算の必要性(部屋の明るさの確認)

しかし、日当たりシミュレーションだけでは、住宅内部の全体的な明るさ、つまり照度については十分に評価できません。照度計算は、以下の理由から当方は必ず実施しております。

拡散光の考慮

直射日光だけでなく、周囲の建物や地面からの反射光、室内での拡散光も含めた総合的な明るさを評価する必要があります。特に都市部や密集地では、周囲の建物からの反射光が大きく影響します。

時間帯ごとの変動

日中の時間帯により、日光の強さや角度は刻々と変わります。これに伴い室内の明るさも変動するため、特定の時間帯に偏らず一日の全体的な照度を評価することが重要です。

光の質と量

直射日光は非常に明るく、強い影を作りますが、拡散光はより柔らかく、均一な照度を提供します。居住空間においては、直射日光と拡散光のバランスが重要であり、これを無視すると不快な眩しさや影が生じる可能性があります。

照明との組み合わせ

夕方や曇天時など、自然光だけでは不十分な場面では照明が必要です。照度計算を行うことで、どこが明るさ不足するのか?どこに配置すべきか?など具体的な照明計画を実施できます。



 

4. 実際の設計への応用

直射日光の日当たりシミュレーションと照度計算を組み合わせることで、以下のような具体的な設計上のメリットが得られます。

●最適な窓配置

窓の大きさや位置を最適化することが可能です。

直射日光の日当たりシミュレーションだけでは間違った窓位置や窓サイズを導き出してしまう可能性があります。照度計算も併せて実施すると、窓の最適化が可能です。

明るさ寄与効果が大きい窓を大きくし、明るさ寄与しない窓のサイズを小さくする。効果的でメリハリを付けた窓設計が可能になるので、コストを抑える事にも繋がります。

●快適な居住空間

直射日光と拡散光のバランスを考慮し、不快な眩しさや影のない快適な居住空間を実現できます。夏の日射の眩しさや暑さなど、逆に太陽光が入り過ぎて不快になるケースもありますので、夏対策も可能になります。

●エネルギー消費の削減

自然光の利用を最大化することで、昼間の人工照明の使用を減らし、エネルギー消費を削減できます。

●こころの健康

適切な自然光は、住民の健康や心理的な福祉にも寄与します。特に冬季のうつ病予防には、十分な自然光が重要です。

どういうことかというと、部屋の自然光での明るさと精神的な安定度は比例する傾向にあります。例えば、関東平野出身の方が雪が多い地域に引っ越しされると、冬場にこころに不調をきたす方もいらっしゃいます。冬の太平洋側は晴天率が高いです。しかし、冬の日本海側は冬の期間晴天は数日間しかないケースもあります。そうすると、冬=晴れで育った人にとっては、暗く感じるケースもあります。


学校の教室の窓が大きい理由
学校の教室は必ず南面に大開口窓があります

学校の教室が南面に面しており、南面の窓をとても大きく取っていることも同じ理論です。


 

5. 結論

住宅設計において、直射日光の日当たりシミュレーションは重要な要素ですが、これだけでは不十分です。照度計算を併用することで、住宅内部の総合的な明るさを正確に評価し、快適で明るい居住空間を実現できます。明るさ環境が優れている事で、お施主様の健康や福祉もプラスに働きます。当方日当たり診断士のサービス、日当たりシミュレーションでは照度計算は込みでマストとなっております。日当たりシミュレーションと照度計算の両方を駆使して、最適な明るさの住宅づくりをしましょう。



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